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:2007:01/18/01:08 ++ 電話
【ショートショート】 No,1
≪電話≫
ふいの電話のベルに飛び起きる僕。
今日は休日、なぜだかはわからないがあまりに眠かったので昼寝をしていたのだ。
電話に出てみると見知らぬ男の声だった。
「寝てたのか?」
(いや、誰だよお前・・・)
「すみません、どちら様ですか?」
「未来の君だよ。」
「いたずら電話は止めてください。切りますよ。」
「ちょ、ちょっと待て、信用したくない気持ちはわかる。でも本当なんだ!」
男は異常なまでに真剣に訴えてきた。
未来の自分なんて信じられるわけが無いじゃないか。
しかし僕は面白かったので真面目に聞いてみることにした。
「わかりました、信じましょう。一体どうしたのですか?」
その僕の言葉に男は安心したらしく
「おう、ありがとう。3時17分34秒に君は強盗に襲われる。だから気をつ・・・」
期待とは裏腹につまらない話だったのに腹を立てて僕は電話を切った。
(もっとマシな嘘をつけないのか・・・?今が3時18分。何も無いじゃないか。もう一眠りするかな。)
まるで悪い夢でも見たかのようにまた眠りについた。
ふいの爆発音に目を覚ます。
目の前に銃を構えた男が立っていた。
時計を見ると3時17分。
僕は今まで見ていたのが『悪い夢』だったことに気が付いた。
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:2006:12/28/02:43 ++ 影
夕方の帰り道。
伸びた僕の影、赤く染まった空、人の居ない路地。
僕は視線を約45度落として歩いている。
視界に入る雑草はどれも緑色。
どれもこれも同じ色を成している、きっと僕も同じ色に見えるだろう。
何が有ったわけでもない。
ただただ、生きる気力の無い日々が僕をうつむかせる。
何となく立ち止まり、そして空を見上げてみた。
目に映る空は茜色で鮮やかなのに、心にはモノクロに映る。
溜息すらつく気にならない。
心はもう虫食いだらけで、どうにでもなれといった感じだ。
今さら何かで埋め合わす気にもならない。
また視線を落とした。
何か違和感を感じたのだが、僕はそのワケを考えもせずまた歩き出した。
暫く歩いているうちに人の気配を感じた。
振り向いてみたが誰もいない。
(おかしいなぁ、確かに誰かいたような気がしたんだけど)
また前を向くと急に視界が暗くなった。
「うわっ・・・!!」
思わず声を上げてしまった。
さっきまであったはずの道が黒い何かで塞がれていたのだ。
声を上げてしまうのも無理は無い。
困惑し、逃げようと思ったとき声がした。
「ちょっと待てよ。」
その黒い何かが僕の腕を掴んだ。
「怖がるな、少し話を聞いてくれ」
聞き覚えのある声、でも聞き慣れない声。
それなのに妙な親近感がある。
カセットテープに録音された自分の声を聴いているような、そんな感覚。
いや、まさに自分の声だった。
「・・・な・・・なんなんだよ?」
ワケもわからず僕はその黒い何かに問いかけた。
「良く俺の姿を見てみろ。」
その黒い何かを改めて良く見てみると、自分の姿と同じ形をしていた。
「俺はお前の影だよ、良く足元を見てみろよ。」
そう言われて足元を見ると、自分の影が消え去っていた。
さっき感じた違和感はこれだったのか・・・と今になって気付いた。
どうやら自分の影が立体化したらしい。
有ってはならない現実。
だが今まさにそのふざけた現実に直面している。
そして僕は取り乱すだけだった。
「どういうことだよ!?なんなんだよ、お前はなんだよ?」
取り乱す僕に対して影は冷静に答えた。冷ややかな声だ。
「気付いたろう?俺はお前の影だ。」
影はもう一度、念を押すように言った。わかってるさと僕はイライラする。
「だから、どういうことだよ?」
今起きている現実は素直に受け止めた、しかし、どういうことなのかが全くつかめないで居た。
目の前は暗く染まっているものの、辺りは相変わらずの夕暮れだった。
カラスの鳴き声が遠くに聞こえる。
普段でさえ、不吉に聞こえる鳴き声も、今はさらにその効果を増す。
「俺は言うなればお前自身だ。ベタな話かもしれないがな。」
まるでドラマや映画で聞いた様な言葉に、動揺はするものの、受け止めようと努めた。
「・・・つまり?」
不思議と、相手に危険性が無いと感じた僕は徐々に落ち着いていった。
本来は恐怖で逃げるべき状況であるにも拘らず冷静になれたのは、相手が自分そのものであると、何よりも自分自身が強く感じたからだろう。
「俺はお前の心にある負の人格だ。本来、人は正の人格と負の人格が均等に保たれることによって成り立っている。だがお前の心にある正の人格が失われ、負の人格になることによって元々負の人格であった俺はお前の影へと移転する・・・」
影が話し終わる前に遮るよう僕は言った。
「よくわからないけど、つまり僕が元気なくして沈みまくってんのが原因ってことなのか?」
あまりにも簡略化された解釈に溜息をついたような口ぶりで影は答えた。
「まぁ、簡単に言えばそうだ。・・・そして問題はここからなんだ。俺は影へと追いやられたわけだが、最悪なことに長期間留まることが出来ない。時間が経てば俺という人格は消えてしまう。」
自分なりに状況を解釈した僕は、少し声を荒げて言った。
その声に驚いたのか、たまたま近くの茂みから出てきた野良猫が慌ててまた元の茂みに逃げ込んだ。
「元々あったはずの負の人格が消えるってことは、逆にもう1つの人格である僕が正になれば正だけの人格になるってことじゃないのか?良いことじゃないか!!」
飽きれた様な口ぶりで、相変わらず冷ややかに影は言った。
「さっきも言ったが、人は正の人格と負の人格が均等に保たれることによって成り立っている。つまり、俺が消えたとき、お前も消える。だが肉体が消えるわけではない。」
「え?」
どういうことだ、と思わず声を出した。
「心が消える。所謂廃人になるんだ」
思いもしない言葉に終始硬直したが、暫くしてから僕は口を開いた。
辺りにはもうカラスも何もいない。
あまりに静かだったのでボソボソ言った僕の言葉すら良く響いた。
「・・・それでも良いよ。別に。もうめんどいし、色々と。」
そう僕が言った瞬間影は大きくなり、僕を包み込んだ。
黒い影が脳裏に入り込んでくる。
負の思念が脳を蝕み始めた。
極悪な犯罪者の心とはこういうものなのだろうか・・・それすらも凌ぎそうな程に脳が憎悪で満ちる。
次の瞬間、急に視界が明るくなった。
どうやら影が脳から抜け出したらしい。
僕は酷く汗を流し、息切れまでしている。
「わかったか、まだお前には心がある。だから今ので苦しむんだ。今ならまだ間に合う。」
少し怒ったような口調で影は言った。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・。」
呼吸の調わない僕は必死に呼吸する。
そして影はピリピリした声で言った。
「まだ生きたいだろう?えぇ?」
ようやく呼吸の調った僕は思いをぶつけた。
「な・・・何のためにさ。別にお前がどうなろうと関係ない。僕がどうなろうと関係ない。どうせ人はいずれ死ぬじゃないか。いつ死のうが関係ない。放っといたら死ぬってんなら、それはそれで良いじゃないか。」
その言葉に頭に来たのか、今まで冷静だった影が大声で怒鳴るように言った。
「そうだよ、どうせ人は死ぬんだよ!だったら何もしないで死ぬよりかは、死ぬ気でなんかやって死んだ方がマシじゃないか?お前は1度でも死ぬ気で何かをやったことがあるのか?」
「・・・・・・。」
その言葉に言い返すことが出来なかった。
そうだ、僕は何もやっていない。
まだ何1つとしてやり遂げていない。
「俺は生きたい。お前を生かしたいからじゃない。俺が生きたいからお前を生かそうと今必死なんだ。」
影の声が急に悲しげな口調になった。まるで死を間近に控えた病人の様な・・・。
「そりゃあ、わかるさ。結局優しさだとか、思いやりだとかが人のためでなく、自分がそうしたいという欲求から成り立っているものだと言うこともわかってる。この世の全てが偽善だってことも。また偽善以上の偽善があることも。」
そうだ、どんな思いやりだって所詮は自分の私利私欲からのものだ。
誰かを救いたいから救う。
誰かを愛したいから愛す。
誰かのために・・・誰かのために・・・。
それが結局は自分のためになる。
「だったら話は早い。お前はお前の心を失わうことのないように死ぬ気でやれ。俺はそれで生き永らえる。・・・そうだな、8日だ、あと8日で俺の力は尽きる。それまでにお前は正の人格を取り戻すんだ。」
さすがもう1人の俺だ、と言わんばかりの語調で影は言う。
8日という厳しい現実に僕は打ちひしがれる。
「どうやって?」
途方に暮れた。
今までずっと変わらなかったのに、今さら8日で変われるのだろうか・・・。
「それは自分で考えな、俺にはわからねぇよ。ただ1つだけ言えることがある。」
影は自信に満ちた顔になった。
これから言うことは間違いなんかじゃない、そう言いたげな顔だ。
「・・・?」
僕は静かに影の次の言葉に耳を傾けた。
「正の人格だったころのお前は、良く笑ってた。」
「・・・・・・。」
影の思わぬ言葉に言葉を失った。
昔の自分は、良く笑っていた・・・。
今は・・・笑えていない。
「こうやって影を立体化させるのには相当な力を使うんだ、ここらで俺はずらかるよ。」
疲れた声で影はそう言った。
自分のせいで、こいつに迷惑掛けちまってるのか。
初めて影に対して申し訳なく思った。
そして思い出したように僕は口を開いた。
「待ってくれ、最後に1つだけ言わせてくれ」
「・・・なんだ?」
不思議そうな顔で影は聞き返した。
夕日はもう沈もうとしている。
一体何時だろう。
こんなときになって些細なことが気になる。
「ありがとう」
影は一瞬びくっとして、そしてこう言い返した。
「礼なら事が治まってからにしてくれよ、あぁ馬鹿らしい」
若干照れているようにも感じ取れたが、本当にそう思っているかのようにも取れた。
「あぁ、そうだよな。・・・じゃあ、またな」
別れを告げると影は「おう」と短く言って、また僕の足元へと戻っていった。
なんだか胸がスッとした感じになり、僕は足早に家へと向かって行った。
夕日は完全に沈み。
辺りは真っ暗で所々に設置された外灯が僕を照らす。
その都度、僕は自分の足元の影を確認するが、何も言ってこないし変化も無い。
だが僕はそこに僕を感じた。
まだまだやれることはある。
今までうつむいていた顔は前を向いていた。
その前に見据えるのは、確かな明日だった。
そして目に映るのは、明かりで。
心に映るのもやはり明かりだった。
☆
なんとなく・・・書いてみました。
眠かったんでかなりいい加減です(笑)
適当に後日直していこうかな~。
たまには物語りもいいですね。
あとはもう少し濃くってオリジナリティーがあって読みやすくって、何より綺麗な文章をつづりたいです(笑)
では、感想お待ちしております~。
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